公務員叩きは何故ムダなのか

ネットの方々とマスコミの方々の意見は対立することが多いのですが、何故か公務員叩きという最近のブームに関しては一致しているようです。
私は、これが不思議でたまりません。そもそも早く会社をやめて怠惰な生活を送りたがっている私にとって、公務員叩きというものはとてつもない悪習であり、日本の労働者にいかに奴隷根性が染みついているかの証拠でもあります。

今回は、この辺について詳しく書こうと思います。願わくば、労働者諸君の奴隷根性洗脳がとけますように。

奴隷さん達の主張

公務員叩きの基本的な論調は、「民間ではサビ残の嵐だし、仕事もキツいし、リストラの不安もあるし大変だ。公務員は定時だし、のんびり働いているし、リストラの不安も無い。だから公務員の労働条件をもっと悪くしろ」というものです。

ではそんな劣悪な労働条件で働いているあなたが、さらに貴重なエネルギーを割いて「公務員は給料が高すぎる」「民間はもっと大変なんだ、お前らももっと低劣な労働環境で働け」と叩くことにより得られるものは何でしょうか? あなたの必死の努力で公務員の待遇を悪くすることに成功したとして、ではあなたのその悪い労働条件は良くなるんでしょうか?

あなたに比べて公務員が高給ならば、あなたは自分の会社の経営者に向かってこう主張するべきです。
「公務員があれほど高給なのに、我々はこれほど低賃金で働いている。公務員並の賃上げを要求する」
主張できないまでも、こういう考えを自然に持てないあなたは、残念ながら奴隷根性が染みついていると断言されても仕方がないでしょう。

叩くと誰が喜ぶのかをよく考えましょう

あなたが必死こいて公務員を叩くことにより、喜ぶのは主に会社経営者です。おそらくあなたの会社の経営者は、毎日笑いが止まらないでしょう。
「あれだけ低劣な労働環境で働かせているのに、経営者のオレに怒りを向けることはせずに、公務員を叩いていやがる。それで労働者の価値はさらに下がるだけなのに、本当にバカだなwwww」と。

そんな経営者ならば、公務員の労働条件が悪くなれば言い出すことは一つです。
「昨今の景気の悪化で、皆さんも知っての通り公務員の給料も削減されている。弊社も、賃金制度を見直さねばならない」
おめでとうございます。あなたが頑張って公務員を叩いたおかげで、あなたの給料はもっと下がりました。

集団を統治する基本

経営側は、労働者という集団の憎悪を、決して自分には向けさせません。その素晴らしい手腕には目を見張るものがあります。
集団統治の基本中の基本ですが、ある集団の憎悪を自分に向けたくない場合、その集団に対してお互いに敵意を植え付け、お互いを仮想的として認識させます。こうすると、憎悪は集団同士で向くようになり、決して上位層に怒りが来ないようになるのです。

たとえば、捕虜に労働をさせる強制収容所の例を紹介しましょう。
劣悪な環境で捕虜を労働させます。この時、全ての捕虜を同一条件でムチ打ちながら働かせると、捕虜たちは団結して抵抗してしまい、扱いにくくなります。
そこで、捕虜を2グループに分けます。片方には楽な仕事(A)を、片方にはキツい仕事(B)を与えます。そしてBグループの捕虜には、いかにAグループは楽な仕事か、いかにAグループは厚遇されているかを見せつけるようにします。するとBグループは、収容所ではなく、Aグループの人間にしだいに憎悪を持つようになります。

このような状態に長く置かれると、驚くべき事にBグループの人間は収容所の人間を叩くことは思いもしないようになり、Aグループの人間と争い続けるのです。本当の敵が見えていないのです。

オープンな労働市場

「労働力の安売りを決して許してはいけない」というのは、労働問題を考える上で基本の概念です。
一度、どこかで労働力の安売りがされてしまうと、待っているのは労働市場全体の雪崩のような労働価値減少です。一人が低賃金で働くことに同意することで、労働者全ての給料が下がってしまうのです。

賃金が下がるということは、ある労働に対する価値が下がることを意味します。公務員の賃金を下げれば、それはその労働に対する価値を下げていることになります。自然と、その下がった価値は伝播し、いつかあなたの仕事の価値も下げることになります。その結果はもちろん、給与の削減です。
自分で自分の首を絞めているというのはこういうことです。

まとめ

  • 自分より待遇のいい労働者を叩いても、ムダな努力です。そんなヒマがあったら、寝てる方がマシです。
  • あなたの労働条件が悪いのは、あなたの会社の経営者が悪いんです。公務員が悪いんじゃありません。
  • 労働市場がオープンとなっている現在、他人の労働条件を悪化させると、自分の労働条件も悪化します。自分の首を絞めるだけです。「あっちがあれだけいいんだから、こっちもあれだけ上げろ」と要求することが世界の常識です。
  • 日本人は、自ら奴隷になりたがる人が多すぎるため、奴隷になりたくない人の労働条件も悪くなっています。迷惑です。